たかサポ利用者さんからの声です。
10年半のひきこもり期間を経て…
Aさんは、小学生の頃はスイミングスクールに通い、中学時代は運動部で北信越大会に出場した経験があるスポーツ少年でした。高校では、先生からの勧めで生徒会役員をしたそうです。生徒会役員が一丸となり、文化祭を成し遂げた経験は貴重だったとのこと。そのようなAさんは、公立大学への学校推薦を辞退し、進路未決定のまま卒業されました。そんなAさんの「たかサポ」での経緯をお伝えします。
●来所のきっかけは、家族からの勧め
Aさんの「たかサポ」来所のきっかけは、ご家族からの勧めでした。ご家族は地域の機関で「たかサポ」のチラシを見つけ、Aさんに紹介されたようです。Aさんは、それから1年後にご家族に連れられ「たかサポ」にお越しになりました。「たかサポ」の存在を知ることと、「たかサポ」に来所することには大きな隔たりがあったようです。「行くことへの恐怖」と「変わるきっかけになるかもしれない」という期待とで揺れ動く状態で「たかサポ」の扉を開けられました。「たかサポ」の存在を知ってから1年の間に機が熟したのかもしれません。
●目標は30代半ばまでに正規就労…
最初は、来所に至る経緯を話してくださいました。家族との関係、進路未決定で卒業した時の気持ち、今の心配事など。家族に心配や迷惑をかけていることに対する忸怩たる思い、多汗や感覚過敏などの自覚、数学の苦手さ、発達障害なのではないかという思いなど、多岐に渡っていました。その後、過去は過去として置いておき、未来に目を向けることに。2週に1回のペースで来所し、「30代半ばまでに正規就労」という目標を立て、自立へのステップを踏み出しました。Aさんにとって10年半ぶりに家族以外の人と話すことは、非常に疲れることだったようです。来所のために二日前から気持ちを整え、前日は睡眠時間を減らして覚醒した状態を作り、来所されていたとのことです。この頃は2週間に1回の「たかサポ」への来所自体が自立へのステップとなっていました。来所から半年程が経過し、初めてプログラムに参加されました。「パソコン教室」は、他の参加者とのコミュニケーションを求められることがほぼないため、人慣れを兼ねての参加でした。パソコン教室の参加を通して、黙々と作業をすることに親和性があると気づかれたようです。この頃から、「自分で風穴をあけるしかない」、「人と合わせる生き方をやめる」など、変化を思わせる言葉が Aさんの口から出るようになってきました。
●プログラムに参加しながら…
「パソコン教室」に続いてAさんは「マナー講座」、「清掃ボランティア」、「社会人講座」を選び、見学を経て少しずつ参加されるようになりました。「やるからにはそれなりにやりたい」という言葉に真面目な人柄が伺われました。就職の話題が面談のテーマになることも増えてきました。「どんな仕事があるのかを知りたい」、「短時間の仕事から始めたい」など、Aさんの希望が少しずつ明確になっていきました。その一方で働くことへの不安も出てきました。「仕事を覚えられないかも…」、「運転免許所を持っていないので天候のことを考えると通勤が心配で踏み出せない」など。そしてその解決法は「やってみるしかない」という言葉のあと、応募に向けてハローワークを利用したり、履歴書を作成したりされました。さらに面接練習も。
Aさんが最初に興味を持った自宅近くのショッピングセンターの警備の求人は、応募に向けて準備しているうちに無くなりました。その後、ホームセンタームサシでの棚卸のアルバイトを経て、1社に応募されました。結果は不採用でしたが、その経験はAさんを更に変化させました。応募から面接に至る過程は恐怖でしかなかったけれど、面接担当の方が優しく接してくださったので「働けるかもしれない」と思ったそうです。
●変わりたいの一心で
その後Aさんは介護施設の食器洗浄の職で職場体験をし、雇用就労に至りました。1日1時間半、週2日の短時間勤務から始められました。以前は、不安な状況や失敗のイメージを反復し、一歩を踏み出すことに抵抗を感じていらっしゃったAさんでしたが、働くことで「自分にもできた」と感じたそうです。
「職場体験プログラムがあって助かりました。」ともおっしゃっています。少しずつ進みたいという自分の気持ちにフィットしたとのこと。現在は目標の「30代半ばには正規就労する」に向けて、大切にしたい価値を確認し、応募の条件を整理しています。
最後に、Aさんが「たかサポ」の扉をノックされてからの3年半を振り返ってみます。Aさんは過去の辛い経験を抱えながら「変わりたい」の一心で「たかサポ」をご利用になっていると感じました。Aさんのその気持ちを丁寧に受け止め、Aさんのペースを尊重し支援してきたつもりです。その間、支援者として大切なことをAさんから数多く学びました。Aさんが置かれている状況は本人が望んだわけでないこと、Aさんのペースを大切にすること、選択するのはAさん自身であることなど数え切れないほどです。水の中で思い切り体を動かしノビノビと泳いでいた小学生の時のように、今後の人生をAさんのペースでゆったりと泳いでいかれるよう、引き続き伴走させていただきますね。
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